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ワインバトラー・ハーヴィ

第11回:「ワインセミナー」

第11回:「ワインセミナー」

都内のホテル勤務をしていた頃、1998年からシェフソムリエとなり、日常の業務に加え増えたのがワインセミナーの実施でした。都内のシティーホテルには、大概レディースクラブというものがあり、その方達向けに多種多様なイベントを定期的にやっていました。その中の一つがホテルのシェフソムリエが行うワインセミナーでした。他にもシェフが行うお料理教室や、フラワーアレンジメント等もありました。

ワインブームということもあって毎回、定員が一杯になりました。ホテルにいた頃は営業企画室という部署があって、大概はここの部署と打ち合わせ、準備に取り掛かります。私はディリー業務が多忙なため、打ち合わせが終わると、営業企画が打ち合わせた内容に沿って、資料を作成してくれます。必要に応じて機材やワイン、会場の手配もしてくれますのでとても助かりました。その頃の担当者はNさんという女性で、その方が殆ど手配をしてくれていましたが、打ち合わせ等では分からない細かなことは何度でも聞いてきてくれましたので、親近感が湧きました。

さて、内容は兎も角、まずは開始にあたり、ゲストのお迎え、事前清算、お席へのご案内、セミナー開始、質疑応答、次回のご案内、お見送り、ここまで出来て、ワインセミナーは終了となります。以上のことの一連の流れは、当たり前だと思っていました。

ある日のこと、違う会社からの仕事でワインセミナーを行った時、引き受けたものの、そういったセミナー準備に必要な物を手配する営業企画の方(Nさんの様な方)がいないことに気が付きました。何から何まで自分でやらなくてはいけません。テキストの作成、ワイン、料理の手配、席割 などなど… その時、初めて、Nさんの様な方の存在の大きさと感謝に気が付きました。

Nさんはその後、転職し、違う会社に行きましたが、何だか懐かしくて、転職後も何回か2人で軽い食事に行きました。Nさんはお酒を召し上がりませんでしたので、少しの飲酒で赤くなり饒舌になったのを今でも思い出します。個人的にどこかに出かけても、ほとんどが仕事の話ではなく、彼女の愚痴の聞き手になっていましたが、30代の女性って色々大変なんだなぁと思いつつ、いつも傾聴していました。そんな彼女とも疎遠になりましたが、最近、FBでつながって、結婚、出産、育児に励んでいる様子でうれしく思います。

 

話は戻りまして、どちらかと言うとソムリエという仕事は、もちろん皆さんとチームワークで業務にあたりますが、ゲストとワインを決める際は一対一でありますから、そういう意味では、孤独な感じはあります。

しかし、このセミナーは企画の人たちとやりますから、何だか安心感は湧きます。多いときでは300人以上の前で話さなくてはいけないので、ある意味、プレゼンテーションの能力も要求されます。私は発声が弱いので、マイクを下あごにくっつけてやっていました。

そうすると弱い発声もマイクが補ってくれて聞き取り易いことになります。(何事もその人に合った研究は必要です。)もう最近では立場上、殆どワインセミナーはやらなくなりましたが、昨年、ある機会があり、日本のトップソムリエと言われている、Hさんのワインセミナーをお手伝いすることになりました。

「フリーランス」という言葉が現在では定着していますが、まさにソムリエの「フリーランス」の典型という感じです。通常、ソムリエはどこかの店舗若しくはホテル等に帰属して、そこのスタッフで働きます。つまり、そこのお店や場所に行けば、そのソムリエのサービスが受けられる訳ですね。

それでも、ソムリエがコンクール等でどんなに有名になろうと、会社で働いている以上は、残念ことに、その会社の決めた賃金しか支払われないことを皆さん(読者の方達)は、ご存じないと思います。基本、普通の企業と同じであります。業績が上がれば多少は上がりますが・・・。

良い店になればなるほど、店のメンテナンスや食材費にかかる原価が高い訳でありますから、人件費というのはそうそう飲食業界では上がるものではありません。では、そういった会社、お店に帰属しているソムリエ達はどうしているのかと言うと・・・、ワインスクールの講師やホテル専門学校の講師をして副収入を得ています。さらに本を出版したり、講演したり、雑誌の対談等に出るのもこのケースに該当します。

しかしながら、Hさんのように、特別にどこかに帰属してスタッフとして働かず、数か月、若しくは年度単位の契約で、複数のお店の臨時ソムリエや、ワインセミナー、講演などを請負、ソムリエフリーランスとして活躍する方法もある訳です。この場合、セミナーも店舗スタッフに任せて品揃え、メニュー等用意してもらいます。愈々、待望のHさんのセミナーの始まる時が来ました!私は、興味津々でした。

セミナーに参加する方達は、Hさんのファンでもあり、ある意味Hさんの顧客でもあります。Hさんに店舗スタッフが、「そろそろお客様が入り始めました」と伝えましたところ、Hさんはこう言いました「じゃ、全員、揃ったら教えて!」と。私は、「何故、お出迎えのご挨拶をしないのだろう?」と単純に思いました。「セミナー参加者とは周知の仲だからか?」とも思いましたが、「親しき仲にも礼儀あり」ではないのかと思いました。

ソムリエが何かセミナーの類をやるときは、ベテランの域の方なら、話の材料がいくつもあって、引出しが沢山あります。難なくセミナーは終了しました。それも時間通りにきっかりに。

普通、この後、質疑応答、歓談、お見送りとなりますが、なんと、Hさんは、「では次の仕事がありますので失礼します。」とさっと帰ってしまいました。セミナー参加者からは何の不満もなく、終了後、ゲスト同士で親交を深めた歓談をしていました。

こういうセミナーは私には出来ませんが、有名なHさんだから許されたのかも知れません。目に見えない人徳というものなのでしょう。個々人のワインセミナーをやるスキルは違いますから、色々と参加してみるのも良いでしょう。でも、居心地の良いワインセミナーに参加できると良いですね。また、ソムリエの働き方も色々あっていいと思います。

By ハーヴィ

 

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